デトロイトの住民の取り組みとは?世界的に広まる市民農園戦略。

Wedge ONLINEに渡辺好明 (新潟食料農業大学学長)氏の自給率の記事が出ていたが、その中に、アメリカのデトロイトの状況が紹介されていた。

デトロイトの「FoodLab Detroit」の取り組みは、いつ頃から始まったのか定かでないが、2017年のTEDですでにプレゼンテーションされ評価されているので、一定の歴史があるのだろう。

そもそも、デトロイトの都市型庭園の歴史は1890年代まで遡る。1893年の不況に際しては、当時の市長が各家庭の裏庭に野菜をつくることを勧めることで成果を収め、1970年代には当時の市長が3.000の空き地を都市型庭園に変えるという目標まで揚げている。デトロイトの都市型庭園は、政策的にも生活費の削減や都市景観の創出に活用されてきた歴史がある。

自動車産業の衰退で過疎化が進み人口が半減した街では、教会や福祉団体、学校などが「都市を荒廃させない!」を旗印に、荒廃した空き地を利用したコミュニティーファームの取り組みを始める。食材を育てるだけではなく、美しい景観を意識した取り組みは、空き地からビルの屋上に至るまで農地と化し、人々が集まる場としても機能している。

デンプン食に偏りがちな失業者・低所得者に新鮮な野菜と就業の場を提供し、子どもたちの情操教育の場にもなっている。地域支援型農業(CSA)、スクールファームという言葉が一般化している。

多民族シティーであるシアトルでも様々なタイプの市民農園が点在し、それぞれ個性的な活動をしている。市民農園は自治体や大学を巻き込み、アメリカ全土に広がっている。

「都市を耕す エディブルシティ」の映画が2014年には制作されていて、舞台がサンフランシスコ・バークレー・オークランドの3都市になっているので、その時点ですでに一定の広がりがあったことになる。流石にアメリカには先見の明を持った意識の高い人達も多い。そういう部分では注目すべき事柄も多い。

EUでも、2020年5月に発表された「Farm to Fork(」農場から食卓まで)は、持続可能な社会への移行の中核を成す重要な戦略となっている。

日本は「個人主義が確立したフレンドリー精神・ボランティア精神」といった感覚に欠けているところがある。それぞれに人との距離感が確立していないと、コミュニティー活動といったものが煩わしいものになる。若い世代が牽引していけばいい形も見えてくるだろう。

一人あたりの農地面積が3.5アールと圧倒的に少ない日本は、よほど効率的な循環を考えた農業でなければならない。また、従来型の慣行農法のように農薬や科学肥料を多用しての農業の広がりは、土の疲弊が進むばかりで、健康被害も蔓延する。

地球の自然循環に習った自然農法でなければならない。生ゴミの堆肥化も一緒に進めていける課題である。

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