自然農は、「持ち込まず、持ち出さず、耕さず」が原則なので、肥料も与えず耕しもしない。
「森を倣え(ならえ)」と提唱されているように、森の営みを畑で再現するイメージ。
大前提は、自然の営みを邪魔しないということだが、すでに人間が暮らし、しかも長い年月をかけて人間が改良してきた植物=野菜を育てて食料にしようというのだから、すでに自然の中に分け入って暮らしている。
それでも、できるだけ自然の摂理に沿ったやり方で、自然の邪魔を最小限にして、しかも美味しい野菜を収穫しようというのだから、欲張りな農業のやり方である。
福岡正信さんの山を訪れた時「種をまくことだけをして4〜5年も放っておけば、適材適所に植物が芽を出し勝手に育つ」と云われた山は、鳥が飛び交い花々が咲き乱れ、まさに桃源郷。畑のクローバーやレンゲ、菜の花は腰のあたりまで育ち、大根は両手で抱えないと持てない大きさであった。人間が制限を与えなければ4〜5年でこういう状況になると。
そういう世界への憧憬はいつも深いところにあるが、住宅地の狭い庭ではそうもいかない。
では、どうやって土作りをするのか?
1、土をむき出しにしないこと。常に何らかの植物やその残骸で土を覆い乾燥させない。
2、草も収穫後の野菜もすべての植物の根は土の中に残すということ。
土の中で根が枯れ、そこに空洞ができ、空気が入り、生物の住処となり、その排泄物や死骸が栄養分となっていく。
我が家のような、芝生を剥いだばかりで草も生えず地力のない土は、4〜5年収穫を期待しないで種だけ播いていけば良い土ができるのかもしれないが、ん〜 つらすぎる。
そこで救世主の一つとして緑肥がある。
緑肥作物の効用。自然農ではすき込むことはしない。
緑肥とは、元来、新鮮な緑色の植物を土壌にすき込むことを指すようだが、自然農ではそういう使い方はしない。
というのは、自然循環の中ではありえないことだから。
すき込むことはしないが、緑肥をまく紅葉は色々とある。
緑肥の効用5つ
①グランドカバー。土をむき出しにせず草で覆うことにより、土の乾燥を防ぎ、腐植が微生物や昆虫の住処となり、やがては分解されて植物の養分となる。
自然農では、緑肥をすき込むことはしない。枯れた後もその場にそのまま残したり、小さく刻んで土の上にまくなどして土をカバーしながら自然風化させるので、栄養成分が堆積していく。
②肥料になる。
マメ科の作物は、空気中の窒素を固定する働きがある。また、土壌の微生物が増え、
その排泄物や死骸が栄養分となって肥沃な土を作る。
③土壌病虫害を抑制。土壌微生物が多様化することでバランスが取れる。
④土壌の団粒化を促進。深根性のマメ科や直根性のイネ科の作物は、作物が良く育つフカフカで水はけ・水持ちの良い土にする働きがある。
⑤バンカープランツとなって益虫を増やし、病虫害を防ぐ効果がある。
このように、「耕す・肥料を与える・病害虫を防ぐ」という人間の手による作業の効果が、緑肥の種を蒔くだけで得られることになる。
小さな菜園でも利用可能な緑肥5選
背丈が高すぎたり、繁殖力旺盛だったりすると小さな菜園には使いづらい。また、刈り取りに労力が必要なものも避けておきたい。その点マメ科は使いやすいが、イネ科の利用度も高いので、まずは手間いらずの大麦は第一候補に上げておきたい。
肥沃な土地にしたいならマメ科
クリムソンクローバー・赤クローバー 〜 根粒菌が窒素固定。肥沃な土にする。ともに、深紅色の花が咲くので景観植物としても有効。9〜11月播種 * 白クローバーは雑草化しやすいので使わない。
ヘアリーベッチ 〜根粒菌が窒素固定。肥沃な土にする。自然枯死するので式わら、マルチ効果もある。柔らかいので扱いやすい。
敷わらやマルチとして
大麦「てまいらず」 〜敷き藁としてやリビングマルチ(生きた植物のマルチ利用)として使える。根菜類のキタネグサレセンチュウの発生や、雑草を抑える効果もある。春まきでは、出穂せず自然枯死するので手間がかからない。かぼちゃやスイカの敷き藁として使える。
雑草抑制、虫対策
ヘアリーベッチ 〜シアナミドを育成して雑草を抑えるので果樹園に利用されることが多い。9月中〜11月上旬播種。
センチュウ抑制と土壌の物理性向上
エン麦 〜 地中深く根を張るので、土壌の排水性・通気性・保水性などを改善させる力がある。
これひとつで緑肥効果網羅
自然菜園緑肥mixレギュラー
エン麦、赤クローバー、クリムソンクローバー、イタリアンライグラス、ベレニアルライグラス、オーチャードグラスを効果的な割合でミックスしたもの。
つる新種苗×自然菜園コラボ商品。
「自然生態系とのバランスを保ちながらの菜園づくり」のサブタイトルがついているように、通路や空きスペースにまいておくと、緑肥の今夏を網羅。我が家のように草マルチ用の草がない場合にも有効。
まとめ
すべての種はばらまきで良い。自然農では、マメ科の種などは播種するだけでOKとされているが、始めたばかりの菜園ではどうなんだろう?せめて圧着くらいはしておこうか。
慣行農業では、緑肥といえば作物を植える前にトラクターで耕して、生のまま畑にすき込むが、自然農ではやらない。肥料は入れないという原則もあるが、あくまで自然の循環に習っての補助作業なので、生の植物が土の中に入ることはない。時間を経て自然循環の中で、肥沃な土を作るという効果はあるものの、直接的に肥料としての効果を狙ったものではない。よく土作りという言葉が使われるが、本質的には人間の力で土作りはできない。