自然農で作物を育てる場合、まずやるべきことは、その土地の現状を観察すること!
その土地がどういう使われ方をしていたかで対処法が違ってくるが、共通しているのは育ちそうな作物を選びながら、ひたすら種を蒔いて地力をあげていく努力が必要となる。
ただし、自然農ができない土地があるので注意。肥料過多で障害を起こしている土地は匂いや土の状態、カチカチやねっとりなどでわかるはず。そういう土地では自然農はできない。有機農法からアプローチする必要があるようだ。
痩せた土地では思うような収穫がすぐにはできなくとも、まず土を蘇らせるという意識で、ある程度辛抱することも必要である。
種まきにもそれなりの段取りとやり方がある。まずは、基本を抑えたやり方で経験を積みながらよく観察し、自分なりのやり方を模索したい。
種まき=播種(はしゅ)の基本
種まきの下準備は、畝を立て、痩せた土地には「米糠油粕」や「ぼかし」をうっすらまき、草マルチ(刈り取った草を細かく切り、土の上に10cmほどの厚みに。おいていく)をたっぷりしておく。
土づくりを終え、気温が15°C以上になってくると、いよいよ春の種まきの季節。
種をまくにはその作物によって適したまき方がある。時期・場所・土質・まき方などは発芽率や収穫量にも影響がでるので、一通り把握しておこう。
種まきの時期
自然農では種蒔時期の見極めが特に重要になる。それぞれの植物の適期に合わせて種を播いていく。
地方により、また昨今ではその年により気温差があるので、それぞれの植物の種まき適温を把握しておいた方がよさそうだ。
品種にもよるが、下記は、作物のおおよその発芽適温
発芽適温 | 作物名 |
15〜20°C | レタス・ほうれん草・パセリ・ネギ・玉ねぎ・カブ |
15〜25°C | 人参・チンゲンサイ |
15〜30°C | キャベツ・大根・カリフラワー |
20〜25°C | 白菜・ブロッコリー・黒大豆・マリーゴールド・バジル・シソ |
とまと・なす・ピーマン・ごぼう・落花生・小松菜 | |
25〜30°C | きゅうり・すいか・メロン・かぼちゃ・スイートバジル・ズッキーニ・ゴーヤ・オクラ |
最近は、早め早めの種まきが主流で、早めにまいて保温する傾向だが、特に直播で育てる場合は十分に暖かくなっての種まき、春巻きであれば5月に入ってからの方がうまくいく確率が高い気がしている。
ただ、始めたばかりの土で、肥料も使わないので、慣行農法と比べると成長が遅い。昨今の感覚では収穫の時期のズレを感じたりもする。
また、春先の直播は芽を出したばかりの葉が虫の集中攻撃にあい、育ちきれないものも出てくるため、苗床で育苗し、しっかり育った時点で地植えした方がいい場合もあると感じている。
種まきに必要な道具
種まきに必要な道具は
・支柱 〜 真っ直ぐにまくために、土に押し当てスジをつけておくとまきやすい。
・メジャー 〜 等間隔にまくため
・瓶の蓋や空き缶 〜 土に押し当て、点まきのための円形穴をつくる。作物により直径5〜10センチ
・ジョーロや霧吹き 〜播種後の水やり。 自然農では基本的に播種後の水やりはしない。できれば雨の日の2〜3日後や、種まき前に水をまき、一段落してから種を蒔いてよく鎮圧して土となじませておくことで水やりの必要はないとされている。ただ、草マルチをする草がないような状況では、水やりも必要である。
好光性種子と嫌光性種子
種には、発芽に光が必要な種「好光性種子」と暗い場所でないと発芽しない種「嫌光性種子」がある。
好光性種子は、
・土を厚くかけると発芽しないので、土を掘らずに播きその上に振りかける程度のの土をかける。
・風で飛ばないように鎮圧する 。
・10日以上発芽しなければ播き直し。
キャベツ類・カリフラワー・ブロッコリー・レタス・春菊・人参・インゲン・ごぼう・小松菜・かぶ・白菜・シソ・バジル・ペチュニア、ベゴニアなど微細種子の多くがこれにあたる。
嫌光性種子は、
・種を播き、種の2~3倍の厚さの土をかける。
・かけた上から鎮圧し、土が飛ばないように。
・土を掘って種を深く埋めたり、上から強く押し固めると発芽しづらくなるので注意。
大根、ネギ、玉ねぎ、ニラ、トウガラシ、なす、とまと、スイカ、かぼちゃ、きゅうり・サルビア、ジニア、スイートピー、スターチス、ニゲラ、バーベナ、パンジー、ビオラなど
中間性の種子であればだいたい0.5〜1cm程度の深さが基本。
栽培に適した間隔
また、作物の種類により、栽培に適した間隔がある。
・株と株のの間隔を「株間」
・列の間隔を「条間」と呼ぶ。
これにより、畝幅も自ずと決まってくる。
種まきをする時には作物にあった株間と条間を調べておき、メジャーを使って位置を決めておくと見た目も美しく手入れもしやすい。
ただし、混植を多用するポタジェにおいては、土肌を見せないことが美しさの基本ともなる。株間をどの程度まで近づけられるかなど、経験を積まないと見えないことも多い。
種のまき方4種。
種のまき方には4種類がある。発芽してからの管理のしやすさやその作物の生長にあった方法を選びたい。
点まき
点まきは、株間を広く取る作物で種の直径が2ミリ以上のものに向いている。
瓶の蓋や空き缶で、丸い穴を等間隔につくり、一つの円の中に間隔を開けて1〜3粒ずつまき、最後は発育のいいものを一本立てにする。
ただし、オクラといんげんは一本立ちにすると大きく育ちすぎるので、2〜3本立ちがいい。
インゲン・オクラ・落花生・空豆・大根・カブ・枝豆 ・・・etc
筋まき
直径1〜2ミリの種を列状にまいていくやり方で、支柱などを土に押し当て深さ1センチ程度のくぼみをつくり、等間隔でまいていく。
一列に発芽するので苗の良し悪しがわかりやすく間引きなどの管理がしやすい。
キャベツ・カブ・人参・レタス・ネギ・玉ねぎ・えんどう・百日草・ポビー・キンセンカ ・・・ etc
ばらまき
直径1mm以下の種で、小さいスペースで密に育てる作物に向いている。
できるだけ均一にまけるよう、あらかじめ種の10〜20倍の用土に種をよく混ぜておき、目の粗いふるいなどを使ってまいても良い。間引きしながら食べられるような、
ベビーリーフ・三つ葉・ミックスレタス・ほうれん草・小松菜、花類ではペチュニア・トケイソウ・コスモス・・・etc
ばら筋まき
20センチくらいの幅の浅めの筋を作り、その筋内にばらまいていく。
ゴマやライ麦など細かい種で背の高い作物に向いている。
種まき後の注意点
自然農で地植えの場合、雨があまりにも降らないとき以外は水やり不要とされている。
しかし、地力があり、草マルチなどで土の表面がむき出しになっていない場合は大丈夫だろうが、始めたばかりの畑で地力もなく、草マルチ用の草もない、乾燥ですぐ固くなるような土ではそうはいかない。
発芽してから根が十分に育つまで、土が乾燥しないよう表面が乾く前に、種を流さないよう静かに水やりする 事が必要のようだ。
根が伸びてきたら、水やりは控え目にする。根が水を求めて下に伸びていくように、また、土の中を乾燥させて酸素がある状態にすることも微生物のためには必要だろう。
ほとんどの種は、2〜3日で発芽するが、ミツバ、パセリ、シソ、アスパラガスなどは発芽まで10日以上かかる。種まき後1〜2週間してもほとんど芽が出ないようなら適期が終わらないうちにまき直し!
発芽しない・芽は出たがよく育たないなどの原因
・乾きすぎか湿りすぎ
・日照不足で芽は出たがよく育たない
・庭土で雑草の種が混じっている
・栽培が適期でない
・連作の影響
・地力がない・酸性土 〜今年のうちの場合はまさにこれだろう。一応酸度も測ったが、酸度計も正確さにかけるところがあるみたいだから。
まとめ
自然農では基本的に土は触らないが、これから菜園を始めようという時には一度耕起して中の異物を取り除き、土をよくほぐして表層にぼかし少々を混ぜ込んでおくと発芽や収穫が多少は向上するだろう。
もちろん、全てを自然に任せて観察していきたい場合は、その土地にあった種を蒔きながら、3〜4年は収穫せずにただ観察していけばいい。
どちらにせよ、自然に寄り添った農業を目指すには、観察力と記録、知識と、労力と、根気強さが必要とされるようだ。